中山競馬場は、有馬記念や皐月賞が行われる関東の主要場です。直線が310mと短く、ゴール前に急坂がある。「小回りで前有利」という理解が一般的でしょう。
当サイトで過去10年(2016〜2026年)の中山4,821レースを集計したところ、その理解はおおむね正しい一方で、もうひとつ見落とされがちな特徴が出ました。芝では内枠が有利(+4.0ポイント)なのに、ダートでは外枠が有利(-2.8ポイント)に逆転するのです。しかも芝の内枠有利は、全10場で阪神に次ぐ強さでした。この記事では、中山の全9コースを横並びで比較します。
- 芝は内枠21.8%・外枠17.8%で内有利。ダートは内枠18.2%・外枠21.0%で逆転する
- 追込は芝全体で5.5%。ただしこれは中山固有ではなく、福島4.8%・小倉5.5%と同水準
- 最も荒れるのは芝1200m(万馬券率82.3%)、最も堅いのは芝2500m(60.6%)
- 急坂の影響で上りが最もかかる。勝ち馬の上り33秒台は11.8%で、東京(52.7%)の5分の1
- 前走脚質が最も効くのはダート(差12.9〜13.2pt)。芝2500mは4.8ptで最も効かない
- 1番人気が最も信頼できるのは芝2500m(複勝率70.2%)。ダ2400mは58.2%で最低
対象は中山競馬場で行われた4,821レース(芝2,096・ダート2,725)です。年間50レース未満のコースは除いています。複勝率とは3着以内に入る割合のことです。
| コース | R数 | 万馬券率 | 配当中央値 | 1番人気複勝率 | 3着内の逃げ先行率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 芝1200m | 355 | 82.3% | 38,610円 | 63.4% | 59.1% |
| 芝1600m | 629 | 74.4% | 26,790円 | 63.4% | 59.9% |
| 芝1800m | 349 | 71.1% | 24,830円 | 62.2% | 63.5% |
| 芝2000m | 492 | 73.8% | 23,040円 | 68.5% | 59.9% |
| 芝2200m | 167 | 68.9% | 21,310円 | 67.1% | 60.8% |
| 芝2500m | 104 | 60.6% | 16,400円 | 70.2% | 59.9% |
| ダ1200m | 1,257 | 76.3% | 28,020円 | 64.4% | 62.7% |
| ダ1800m | 1,377 | 70.9% | 25,450円 | 64.8% | 69.8% |
| ダ2400m | 91 | 81.3% | 44,850円 | 58.2% | 70.0% |
出典:TARGET frontier JV(2016〜2026年、JRA平地レースを当サイト集計)。ダ2400mは91レースのため参考値です。
芝は距離が延びるほど堅くなるという素直な並びになりました。芝1200mの82.3%から芝2500mの60.6%まで、21.7ポイント下がります。配当中央値も38,610円から16,400円へと半分以下です。
ダートでは1800mが最も堅く(70.9%)、2400mが最も荒れます(81.3%・参考値)。ダ2400mは1番人気の複勝率も58.2%と全コースで最低でした。
| 馬場 | 内枠(1〜4番) | 外枠(外側3分の1) | 差 |
|---|---|---|---|
| 芝 | 21.8% | 17.8% | +4.0pt(内有利) |
| ダート | 18.2% | 21.0% | -2.8pt(外有利) |
出典:同上。12頭以上のレースが対象。
同じ競馬場で、馬場が変わると枠の有利が逆転します。他場と比べると、この芝の内枠有利がどれだけ強いかが分かります。
| 競馬場 | 芝の内外差 | ダートの内外差 |
|---|---|---|
| 阪神 | +5.4pt | -2.9pt |
| 函館 | +5.2pt | -1.0pt |
| 中京 | +4.6pt | +2.1pt |
| 中山 | +4.0pt | -2.8pt |
| 東京 | +0.9pt | -2.3pt |
| 新潟 | -4.4pt | -3.0pt |
出典:同上。プラスは内枠有利、マイナスは外枠有利。
芝の内枠有利は、阪神(+5.4pt)・函館(+5.2pt)・中京(+4.6pt)に次いで中山が4番目。上位に入る強さです。新潟(-4.4pt)とは正反対の性質になります。
理由は構造から説明できます。中山の芝は直線310mと短く、コーナーが4回。外を回れば距離をロスし、短い直線では取り返せません。一方ダートはスタート地点や砂厚の関係で内が不利になりやすく、外から被されずに進める利点が上回ります。馬場が変われば、同じ枠順の意味も変わるということです。
| 競馬場 | 芝の追込複勝率 | レース数 |
|---|---|---|
| 福島 | 4.8% | 1,083 |
| 中山 | 5.5% | 2,096 |
| 小倉 | 5.5% | 1,516 |
| 札幌 | 5.6% | 652 |
| 函館 | 7.1% | 772 |
| 中京 | 9.5% | 1,595 |
| 新潟 | 10.2% | 1,391 |
| 東京・阪神 | 11.1% | 2,537・2,188 |
出典:同上。距離別の複勝率を出走レース数で加重平均したもの。
中山の芝で追込が5.5%しか馬券に絡まないのは事実です。東京・阪神(11.1%)の半分。後方一気は期待できません。
ただし正直に書いておくと、これは中山固有の現象ではありません。福島4.8%、小倉5.5%、札幌5.6%と、小回りコースはどこも同じ水準です。「中山だから追込が届かない」というより、「小回りだから届かない」と理解するほうが正確でしょう。中山の個性を語るなら、②の枠順の逆転のほうが本質的です。
中山のゴール前には高低差2.2mの急坂があります。この坂が、勝ち馬の上り3ハロンにはっきり表れます。
| 競馬場 | 芝1200m | 芝1600m | 芝1800m | 芝2000m |
|---|---|---|---|---|
| 中山 | 34.39秒 | 34.78秒 | 34.84秒 | 35.16秒 |
| 阪神 | 34.21秒 | 33.97秒 | 34.07秒 | 34.89秒 |
| 東京 | — | 33.94秒 | 33.87秒 | 33.98秒 |
| 京都 | 34.00秒 | 34.58秒 | 34.47秒 | 34.79秒 |
| 新潟 | 34.83秒 | 33.71秒 | 33.94秒 | 34.64秒 |
出典:同上。良馬場の勝ち馬の上り3ハロンを平均したもの。各セル40レース以上。
距離を揃えても、中山は上りがかかります。芝2000mでは東京より1.18秒も遅い。芝1600mでも0.84秒の差があります。
もっと分かりやすいのが、速い上りが出る頻度です。
| 競馬場 | 勝ち馬の上りが33秒台以下 | 35秒以上 |
|---|---|---|
| 東京 | 52.7% | 6.6% |
| 新潟 | 41.9% | 26.3% |
| 阪神 | 31.8% | 25.0% |
| 京都 | 26.7% | 28.5% |
| 中山 | 11.8% | 44.1% |
出典:同上。芝・良馬場の勝ち馬が対象(中山1,659R、東京2,167R)。
東京では勝ち馬の半数以上が33秒台の脚を使うのに、中山では8回に1回しか出ません。逆に35秒以上かかるレースが44.1%と、東京(6.6%)の7倍近くあります。
中山の中でも距離が延びるほど上りはかかり、芝1200mの34.39秒から芝2000mの35.16秒まで落ちます。急坂と短い直線が、瞬発力勝負を許さない構造になっているということです。
実用的にはこう読めます。前走で33秒台の上りを使って勝った馬が中山に来ても、その脚は再現されにくい。逆に、上りがかかる展開で粘り込んだ実績のある馬のほうが、この舞台には合います。東京や新潟の外回りで見せた末脚を、そのまま中山に持ち込まないことです。
| コース | 前走で前につけていた馬 | 前走で後方だった馬 | 差 |
|---|---|---|---|
| ダ1200m | 28.3% | 15.1% | +13.2pt |
| ダ1800m | 29.6% | 16.7% | +12.9pt |
| 芝1200m | 27.5% | 16.1% | +11.4pt |
| 芝1800m | 30.0% | 18.8% | +11.2pt |
| 芝1600m | 28.8% | 17.8% | +11.0pt |
| 芝2000m | 27.2% | 18.0% | +9.2pt |
| 芝2200m | 27.3% | 18.5% | +8.8pt |
| 芝2500m | 26.9% | 22.1% | +4.8pt |
出典:同上。前走の脚質は当サイトがコーナー通過順から判定したもの。
ダートでは前走の脚質が13ポイント前後の差を生みます。ダートで後方から差す馬は、コースを問わず苦戦するという当サイトの他記事とも一致します。
一方で芝2500mは4.8ptと突出して小さい。有馬記念が行われるこのコースでは、前走で後ろにいた馬でも22.1%と健闘しています。距離が長いぶん、道中の位置取りより地力が問われるということでしょう。
最も堅いコース
芝2500m|万馬券率60.6% / 1番人気複勝70.2%
有馬記念の舞台。1番人気の勝率42.3%は全コース最高で、配当中央値も16,400円と最も低い。前走脚質の差も4.8ptと小さく、地力どおりに決まりやすいコースです(104レース・参考値)。
最も荒れるコース
芝1200m|万馬券率82.3% / 配当中央値38,610円
スプリンターズSの舞台。逃げ馬の複勝率45.4%が芝では最高で、内枠21.8%・外枠17.9%と枠の差も出ます。前に行ける内枠の馬から組み立てるコースです。
ダートは前で運べるかがすべて
ダ1800m|3着内の逃げ先行率69.8% / 追込3.0%
追込は3.0%で、33頭に1頭しか馬券圏内に来ません。前走で前につけていた馬(29.6%)と後方だった馬(16.7%)の差も12.9ptと大きい。外枠を引けたうえで前に行ける馬が理想です。
- 馬場によって枠の見方を切り替える芝なら内枠(21.8%対17.8%)、ダートなら外枠(21.0%対18.2%)。同じ中山でも逆になります。
- 芝は距離が短いほど荒れると考える芝1200m82.3%から芝2500m60.6%まで、きれいに下がります。距離帯で買い方を変えます。
- ダートでは前走の脚質を重視する13ポイント前後の差。前走で後方だった馬は割り引きます。
- 芝2500mだけは例外扱い前走脚質の差が4.8ptと小さく、1番人気の複勝率70.2%。位置取りより地力で選びます。
- 前走の速い上りを鵜呑みにしない中山で33秒台が出るのは11.8%だけ。東京や新潟で見せた末脚は再現されにくいと考えます。
- 追込馬は芝でもダートでも軸にしない芝5.5%、ダ1800m3.0%。ただしこれは小回りコース共通の性質です。
芝の追込5.5%は低い数字ですが、福島4.8%・小倉5.5%・札幌5.6%と小回りコースはどこも同水準です。中山の個性として語るなら、枠順の逆転のほうが適切です。
ダ2400mは91レース、芝2500mは104レースで、いずれも300を下回るため参考値です。重賞が集中するコースでもあり、通常開催の傾向とは異なる可能性があります。
本記事は10年分をまとめた数値です。開催が進むと馬場が荒れて内が不利になるなど、時期による変化は反映していません。
21.8%は「3着以内に来やすい」という意味です。内枠の馬が有利だからといって、そのまま利益になるわけではありません。回収率は通常100%未満です。
- 中山の最大の特徴は芝は内枠有利(+4.0pt)、ダートは外枠有利(-2.8pt)という逆転
- 芝の内枠有利は全10場で4番目の強さ。新潟(-4.4pt)とは正反対
- 芝は距離が延びるほど堅い。芝1200m 82.3%→芝2500m 60.6%
- 最も堅いのは芝2500m(1番人気複勝70.2%)、最も荒れるのは芝1200m
- 急坂で上りがかかる。勝ち馬の上り33秒台は11.8%、35秒以上が44.1%(東京は6.6%)
- 前走脚質はダートで13pt前後、芝2500mでは4.8ptしか効かない
- 追込5.5%は低いが中山固有ではなく小回り共通(福島4.8%・小倉5.5%)
出典:TARGET frontier JV(2016〜2026年、JRA平地レースを当サイト集計)。対象は中山競馬場で行われた4,821レース(年間50レース未満のコースを除く)。枠順の集計は12頭以上のレースに限定し、馬番を3分割して内・中・外としています。脚質はコーナー通過順から判定し、前走情報は各馬の出走履歴を時系列に復元して算出しています。
